2021 前期 神戸大 理系数学 大問1

今回から大学入試数学の過去問の解説を始めます。その問題を解くときにどこがポイントになるのかということも解説していきます。では早速始めましょう。

注意:このサイトはPCで見る方向けに作成しているため、スマホからだと少々見づらいかもしれません。

問題文はこちらから。

https://www.office.kobe-u.ac.jp/stdnt-examinavi/wp-content/uploads/2021/08/03_z_sugaku_ri_R3.pdf

目標解答時間は15分です。特に難しくはないので、すらすら解けてほしい問題です。

解答のポイント

この問題を解く上でのポイントは2つです。

①(2)で数学的帰納法を用いることに気付けるか。

(2)の問題文には「\(n\)を正の整数とするとき」と書かれています。つまり

全ての正の整数\(n\)で示さないといけません。

\(n\)が比較的小さい整数の場合は直接計算することもできるでしょう。

実際(1)で\(n=5\)までは計算しています。しかし\(n=100\)とか\(n=1000\)とかで直接計算することはできるにはできますが、全部を計算するのは事実上不可能ですし、試験時間までに書き終わる解答用紙のスペースも足りません。

そこで使えるのが数学的帰納法というわけです。

数学的帰納法はある自然数(たとえば1)以上の全ての整数において示したいことを示すことができる便利な道具ですから、その道具をうまく使いましょうというわけです。

②(1)から虚部と実部の整数を10で割った余りの規則性に気付けるか。

(1)の問題文に「虚部の整数を10で割った時の余りを求めよ」とあります。

実際に計算すると、余りがループしていることに気づくはずです。

これと数学的帰納法を組み合わせて(2)の証明ができるかというとそういうわけでもありません。実は、

実部の整数を10で割った余りもループしています。

これを用いずに(2)を証明しようとしてもうまくいかないため、(2)を証明している最中でそれに気付けるかということが求められます。

もちろん最初から気づいた人は先見性があり、素晴らしいと思います!

解答

(1)何も考えずただひたすら計算するだけです。強いていうなら計算ミスを防ぐために順々に\(2+i\)をかけるのは避けましょうというところでしょうか。

$$(2+i)^2=4+4i-1=3+4i$$

$$(2+i)^3=(2+i)^2 (2+i)=(3+4i)(2+i)=2+11i$$

$$(2+i)^4=(3+4i)^2=-7+24i$$

$$(2+i)^5=(3+4i)(2+11i)=-38+41i$$

となる。また、虚部の整数を10で割った余りはそれぞれ4, 1, 4, 1である。(終)

 

(2)\((2+i)^n\)の虚数部分の係数が0でないことを示せば良い。そのために、

\(n=2m-1\)(\(m\)は自然数)のとき

$$(2+i)^n=(2+i)^{2m-1}=(10a+3)+(10b+4)i\ \ (a, bは整数)$$

\(n=2m\)(\(m\)は自然数)のとき

$$(2+i)^n=(2+i)^{2m}=(10a’+2)+(10b’+1)i\ \ (a’, b’は整数)$$

となることを\(n\geq 1\)についての数学的帰納法で示す。

\(n=1\)のときは明らか。

\(n=2\)のとき、\((2+i)^2=3+4i\)より明らか。

\(n=1, 2, \cdots, 2m\)(\(m\)は自然数)のとき成り立つと仮定する。

(ⅰ)\(n=2m+1\)のとき

$$(2+i)^{2m}=(10c+3)+(10d+4)i\ \ (c, dは整数)$$

と仮定すると

\begin{align*} (2+i)^{2m+1}&=(2+i)^{2m}(2+i)\\ &=\{(10c+3)+(10d+4)i\}(2+i)\\ &=\{10(2c-d)+2\}+\{10(c+2d+1)+1\}i \end{align*}

となる。\(10(2c-d), 10(d+2d+1)\)は整数なので、\(n=2m+1\)のときも成り立つ。

(ⅱ)\(n=2m+2\)のとき

$$(2+i)^{2m+1}=(10c’+2)+(10d’+1)i$$

とおくと

\begin{align*} (2+i)^{2m+2}&=(2+i)^{2m+1}(2+i)\\ &=\{(10c’+2)+(10d’+1)i\}(2+i)\\ &=\{10(2c’-d’)+3\}+\{10(b+2d)+4\}i \end{align*}

となる。\(10(2c’-d’), 10(b+2d)\)は整数なので、\(n=2m+2\)の時も成り立つ。(終)

おわりに

この問題は、数学的帰納法をちゃんと使えるかという問題でした。

ただ、数学的帰納法の使い方が少々テクニカルな気もします。

入試ではこういったパターンもよく出題されるかなと思いました。

難易度的には易しい部類に入ると思うので、この問題は落とせないですね。

ではまた次回。

しゃもじ

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